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Vol.96 森林減少問題2 〜国際社会の枠組み・取り組み〜


こんにちは。ReFのNaomiです🌞

11月も中旬となり、やっと木々の色が変わってきましたね。今年は平年と比べなかなか気温が下がらず、紅葉がずいぶん遅れています(2024年紅葉・黄葉見頃予想(第3回)を発表, 2024)。さらには、富士山の山頂にも雪がなかなか見受けられず、統計開始130年で最遅の初冠雪であったようです。地球温暖化で年々暑さが厳しくなっていく矢先、冬の到来も遅れていますよね。

今回の記事では、私が前回10月に投稿した Vol.87 森林減少問題 の続きとして、森林減少問題の中でも、国際社会における取り組みについて説明します。

前回の記事では、森林減少問題における基礎的な部分として、1. 森林の有する機能, 2. 森林減少の動向と現状について解説しました。まだ読んでいない方はぜひそちらから読んでいただけると、今回の記事の理解度が増すかと思います。


<目次>

  1. 持続可能な森林経営に関する枠組み・協定

  2. 国際社会の取り組みに対する進捗状況・課題

  3. 私たち個人にできることとは?



持続可能な森林経営に関する枠組み・協定

森林減少問題に対して、国際社会はさまざまな取り組みを行っています。ここでは、国連等における議論と、代表的な枠組みや協定を紹介します。

1.国際課題として認識された場である地球サミット


持続可能な森林経営の実現が地球規模の課題として認識されたのは、1992年の「国際環境開発会議(United Nations Conference on Environment and Development, UNCED)」(地球サミット)以降です。この会議は、ブラジルで開催されました。

会議の中では、環境と開発の調和を目指すための基本原則である「リオ宣言(Rio Declaration on Environment and Development)」や、持続可能な開発のための国際的な行動計画である「アジェンダ21(Agenda 21)」などが合意されました。

森林に関しては、「森林原則声明(Forest Principles)」が初めての世界的合意として採択されました。

しかし、自国資源の利用に制限がかかることを懸念した途上国からの強い反対を受けたことで、この会議では法的拘束力を持つ森林条約などを交渉するには至らなかったという背景があります。

この会議は、森林が生態系の維持と気候変動の緩和において果たす役割が再認識された点において有意義であったといえます。

2.国連森林フォーラム(UNFF)



国連にて現在は、「国連森林フォーラム(United Nations Forum on Forests)」が森林に関する議論の場になっています。

国連森林計画2017-2030では、2030までの世界森林目標及びターゲット、その手段が明記されています。

これにより、各国が自主的な森林保全計画を立て、実行する枠組みが提供されています。

3.「基準・指標」としてのモントリオール・プロセス



モントリオール・プロセスとは、先ほど述べた地球サミットにおいて採択された、持続可能な森林経営の「基準・指標」として代表されるものです。

これには日本、アメリカ、カナダ、ロシア、中国などの12カ国が参加しています。これら12カ国は、世界の温・寒帯林の約80%、世界の森林面積の約50%程度を占めています。

モントリオール・プロセスの現在の「基準・指標」として、以下のものが採択されています:基準1:生物多様性の保全基準2:森林生態系の生産力の維持基準3:森林生態系の健全性と活力の維持基準4:土壌及び水資源の保全維持基準5:地球的炭素循環への寄与基準6:長期的多面的な社会経済的便益の維持増進基準7:法的制度的経済的な枠組

適切な森林管理においてはこのような基準や指標を確立することが大変重要です。

4.森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダース宣言


2021年にグラスゴーにて開催された、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)にて、「森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダース宣言」が発表されました。

ここでは、2030年までに森林減少を食い止め、土地の回復を進めることを約束しています。100か国以上がこの宣言に賛同し、森林資源の保護と再生に向けて具体的な行動計画を策定することを宣言しました。

5.開発途上国との協働:REDD+、JCMの推進


開発途上国との協働で推進されているものとして、REDD+(レッドプラス: Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)や、JCM(日本の二国間クレジット制度)が挙げられます。

開発途上国では、森林の減少・劣化が進み、温室効果ガス排出の増加が問題となっています。REDD+は、こうした排出量の削減を目指し、森林保全や炭素蓄積の強化を含む活動です。2005年に提案され、2010年のカンクン合意で大枠が定義、2013年のワルシャワ枠組で方法論が確立されました。緑の気候基金(GCF)は、REDD+による削減成果に資金を提供し、日本も支援を行っています。

また、JCM(日本の二国間クレジット制度)は、日本が他国と協力して温室効果ガスの排出削減プロジェクトを行い、その成果を両国で共有する仕組みです。日本の林野庁は、JCMを通じて、カンボジアやラオスでのREDD+プロジェクトを推進する環境整備を行っており、ガイドラインを策定し、2023年にはカンボジアで初のクレジット発行が承認されました。

国際社会の取り組みに対する進捗状況・課題

森林減少問題に取り組むため、上記にあげたように、国際社会では数々のイニシアチブが取られています。

このような取り組みは重要な役割を果たしている一方で、多くの課題に直面しています。

例としては、発展途上国を中心とした資金不足や、資金の使途や削減成果の透明性とガバナンスに関する問題、森林保全活動が地域住民や先住民の土地利用権を侵害するケースなどが挙げられます。

私たち個人にできることとは?

個人としても森林減少問題に対してできることがあります。

まず、違法伐採された木材や木材製品を購入しないことが重要です。認証制度には、以下のものがあります:

・FSC認証

・PEFC認証

・SGEC認証



今あげたような認証で認められているものを買うことで、違法な森林伐採を助長せず、持続可能な森林経営を支援できます。

次に、紙製品の使用を減らすことも効果的であるといえます。デジタル化を進めることで、紙の需要を減らし、森林資源の保護に寄与できるからです。また、再生紙の利用を心がけることで、資源の無駄遣いを減らし、森林伐採の抑制に繋がります。

さらに、エコバッグを使用する、木材や紙製品の製造元が持続可能な方法で製造しているか確認することも有効な取り組みです。

こうした日常の小さな選択が、森林保護に大きな影響を与えることができます。

参考文献:

2024年紅葉・黄葉見頃予想(第3回)を発表. (2024, October 30). 日本気象株式会社. https://n-kishou.com/corp/news-contents/autumn/Cipó, P. (2022, March 31). Glasgow Leaders’ Declaration on Forests and Land Use: New policy brief. Plataforma CIPÓ. https://plataformacipo.org/en/climate-justice/policy-brief-on-the-glasgow-leaders-declaration-on-forests-and-land-use-published-through-unu-cpr/The Montréal process. (n.d.). https://montreal-process.org/United Nation. (n.d.). United Nations Conference on Environment and Development (UNCED). UN Photo. https://media.un.org/photo/en/asset/oun7/oun7565760United Nations. (n.d.). United Nations Conference on Environment and Development (UNCED). UN Photo. https://media.un.org/photo/en/asset/oun7/oun7565760United Nations Forum on Forests. (n.d.). https://www.un.org/esa/forests/index.html外務省. (2024, August 16). 国連における森林問題への取組. 外務省 外交政策. https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/bunya/shinrin_un.html林野庁. (2024, November 8). 森林・林業分野の国際的取組:林野庁. https://www.rinya.maff.go.jp/j/kaigai/環境省. (n.d.). 国際的な森林保全対策. https://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_1_5.html

 
 
 

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